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スタッフブログ2021-02-25

ネコちゃんがトイレに何度も行く時何が考えられる?

院長の藤野です。スタッフブログということでどんな内容にしよう

か迷っていたのですが、せっかくの機会ですので、獣医師らしい

診療に関しての内容に今回はしてみました。

オーナー様よりお電話で、この症状は緊急で病院に行くべきか

という相談を良く受けます。特に診察時間外に症状に気付き不安に

過ごされている方も多いと思います。

そこで今回は良く聞かれる症状の1つである、ネコちゃんの

『トイレ(排尿)に何度も行く』時に何が考えられ、緊急性が高い

ものなのかどうかをお話したいと思います。宜しくお願いします。

『トイレに何度も行く』子で先ず大事なことは、一度に出している

おしっこの量は多いか少ないかです。量はしっかりしているが回数

が多い子は『多尿』であり、少しずつを何度もしている子は

『頻尿』ということになります。鑑別する病気が全く違います

ので、トイレに何度も行く時はおしっこがどれくらい出ているかも

可能であれば確認しておいて下さい。

まずは『多尿』ですが、尿が出過ぎてしまい脱水し易い状態

なので、『多飲』も同時に起こしているはずです。多飲の定義は

80~100ml/kg/dayとされていますので、3kgの子なら1日で300ml

程度飲んでいれば多飲ということになります。しかし、実際には

個体差がありますので、以前に比べて多ければ注意が必要です。

『多飲多尿』の子で考えられるネコちゃんの主な病気としては、

慢性腎不全、甲状腺機能亢進症、糖尿病、

高カルシウム血症(上皮小体機能亢進症、悪性腫瘍など)などで、

高齢の子では珍しい病気ではありません。緊急ではないかもしれ

ませんが、どれも危険な病気ですので、可能な限り早期に来院して

いただき検査を行うことはお勧めします。

次に頻尿(血尿を伴うこともあり)についてです。頻尿の子で最も

大切なのは、十分な尿量が出ているかということです。頻尿でかつ

尿量が少ない場合(あるいは排尿姿勢をとるが全く出ていない

場合)、尿道に何かが詰まって排尿困難になっている(尿道閉塞)

可能性があります。尿道閉塞では腎後性急性腎障害を引き起こし、

数日もかからず命に関わる危険性があるので、様子を見ずに

早めに受診する必要があります。頻尿が主症状の病気では元気食欲

があるのが基本ですが、尿道閉塞の子ではないはずですので、

それも大事なポイントとなります。頻尿だけでなく元気食欲が

ない場合は必ず受診するようにして下さい。

頻尿で元気食欲がある時は、ほとんどの場合が膀胱炎です。

猫ちゃんではストレスが一因とされる特発性膀胱炎が多く、無治療

でも9割の子が1週間以内に改善すると言われており、少し様子を

みても問題ないことは多々あります。しかし、中には膀胱結石や

膀胱腫瘍など別の原因で症状が出ていることもあります。以前、

数カ月以上血尿と頻尿が止まらないという主訴で来院された子が

いましたが、その原因は5mmほどの尖った膀胱結石2個だけ

でした。外科手術で速やかに改善しましたが、目安として

2週間以上頻尿、血尿が改善しない時は、何か膀胱炎以外の原因

がないかを調べるために受診することをお勧めします。

以上まとめますと、



『多飲多尿』→ 慢性腎不全、甲状腺機能亢進症、糖尿病、
        
高カルシウム血症などの病気を疑います。緊急性は低いかもしれま

せんが危険な病気ですのでなるべく早期に受診してください



『頻尿(+血尿)で元気食欲がない』→尿道閉塞の可能性があります。

様子を見ずに緊急で来院してください



『頻尿(+血尿)で元気食欲がある』→特発性膀胱炎を疑います。

1~2週間様子を診ても大丈夫かもしれませんが、膀胱結石や腫瘍

などがないかの検査は受けておくことをお勧めします。


※ 上記はあくまで目安であり例外もあり得ますので、もちろん
  早めに病院を受診するに越したことはありません。
  来院可能な方は早めに受診してください。


以上、猫ちゃんがトイレに何度も行く病気についてお話をさせて

いただきました。

今回の記事が、少しでも皆様の参考になれば幸いです。